淀川水系河川整備計画の策定に向けての取り組み

皆さまからよせられたご意見と回答

ご質問   京都府宇治市 / 薮田秀雄

【河川管理者は堤防など河川管理施設 の耐震対策をなぜ具体的に示さないのか? 】

国土交通省近畿地方整備局 様
宇治・世界遺産を守る会       
1、原案は、「3.現況の課題」の「3.2治水・防災 3.3.3 地震・津波」で「平成7年兵庫県南部地震によって淀川下流部の堤防が破壊されたことを受けて堤防の地震対策が実施されてきた。淀川大堰、毛馬排水機場の重要構造物については、耐震点検を実施の上、対策を行っているが、その他の河川管理施設の多くについては耐震点検が実施されておらず安全性が確認されていない」と記していますが、「4、河川整備の方針と具体的な整備内容」の「4.3.5 地震・津波対策」では「 1)河川管理施設の耐震対策」で「淀川大堰は、耐震対策を継続実施する。上記以外の河川管理施設は、耐震点検を実施の上、対策を検討する。また、許可工作物に対しても耐震点検及び対策を実施するよう申請者に対して助言を行う。」と記しているだけで、いつまでにどの様な対策をするのか全く具体的対策を示していません。
 この点について、淀川水系流域委員会宮本委員長は、「多くの河川管理施設で耐震点検が実施されていない理由は何か」と指摘し、河田委員は「整備基本方針が300年先をみなすものであれば、南海地震の発生を視野に入れて堤防等の施設の耐震補強、液状化対策を積極的に進めなければならない。南海地震が、遅くとも今世紀半ばまでに発生することは常識である。その場合、淀川流域の河川施設の大半は、震度6弱から5強の揺れに遭遇すると考えられる。また、同時的に発生が予測されている東南海地震に際しても三重県を中心に、震度6弱程度の揺れが予測されている。したがって、地震による河川施設の被災が、次の洪水氾濫災害につながらないような複合災害対策を進めなければならない。この点の記述が一切見られない。もし、現在すでに施工中ならそのことを記載しなければならない。」と指摘しています。

 しかし河川管理者の回答は「H19年3月に河川構造物の耐震性能照査指針(案)が策定されたところであり、今後耐震点検を進めてゆきます。」であり、具体的には何も答えていません。
 また私の質問「宇治川堤防の点検内容と対策について具体的に説明されたい。宇治川の堤防の耐震調査は実施されたのかどうか。耐震対策はどうなるのか。昭和28年台風13号洪水を対象にした場合と琵琶湖後期放流を対象にした場合の堤防の安全性と対策の違いについて説明されたい。」に対しても「河川構造物の耐震性能照査指針(案)が平成19年3月に新たに制定されました。宇治川堤防については旧基準による調査検討は完了しており、引き続き新指針による調査検討を進めていきます。」の回答であり具体的に何も示していません。
堤防は川原の砂礫を積み上げたようなものですから、大地震が発生した場合、堤防が崩壊・決壊し、地震による直接的被害の上にさらに河川洪水によって大災害を引き起こす危険性が予想されます。地震によって堤防をはじめ河川管理施設はどうなるのか、対策はどうするのか、極めて重要でかつ緊急の課題です。しかし原案ではいつまでの何をどうするのか全く何も具体的に示されていないということは極めて重大な問題です。河川管理者は具体的対策を明示すべきです

2、また、原案は基礎案において瀬田川・宇治川における琵琶湖後期放流という特殊な条件を考えて耐震対策を行うことを特記していたものを削除し、他の河川と同様に一般化し、しかも何らの具体的対策を示していないことは重大な問題です。
 宇治では、南海地震・東南海地震が発生すれば震度6弱、黄檗断層が動けば震度6強、宇治川断層が動けば震度7が想定されています(宇治市危機管理課)。 私は「基礎案『4.3.3地震・津波、(2)河川管理施設の耐震対策」』では『 1)堤防の耐震対策実施(1)淀川下流、(2)瀬田川・宇治川、 2)堤防以外の河川管理施設の耐震対策』が詳細に書かれていた。基礎案の『(2)瀬田川・宇治川  琵琶湖の後期放流により長期の高水位が継続する瀬田川・宇治川区間については、堤防強化との関係を含めて、耐震補強を検討し、実施する。』が原案では削除されているのはなぜか。」と指摘、河川管理者は「新指針は、堤防を含め主な河川構造物について規定されており、原案では対象となる全ての河川管理施設について耐震点検を実施の上、対策を検討することとしています。」と回答しています。
 しかし瀬田川・宇治川における琵琶湖後期放流は、明らかに他の河川では起こりえない特異な状況を引き起こします。琵琶湖後期放流を1500トン/s、天ヶ瀬ダム放流を1500トン/sにすれば、宇治川では戦後最大洪水・昭和28年台風13号洪水より高い水位でHWL目一杯の洪水となり、しかも継続時間は昭和36年6月洪水シミュレーションの場合、約16日間で、台風13号洪水の場合の高水位の継続時間が1〜3時間、その128〜384倍の継続時間の洪水となります。このような放流は全国で前例がないものです。その巨大なエネルギーが堤防に与える影響はいかなるものなのでしょうか。
私は@1500トン/s放流のための塔の島地区河床掘削は世界遺産と一体の宇治川の河川環境を根幹から破壊する。(2)1500トン/s放流は下流の宇治川堤防と市民にとって危険である、の2点において後期放流1500トン/s、天ヶ瀬ダム1500トン/s放流に反対ですが、河川管理者は、1500トン/s放流について宇治川堤防の耐震対策も含めて具体的対策を明示する責任があります。

3、平成19年12月20日、河川管理者と独立行政法人水資源機構は、記者会見において「淀川水系河川整備計画原案における各ダムの概算事業費とそれをふまえた治水対策の進め方について」を発表しました(第69回委員会(H19.12.27)審議資料1−6)。
 その中の「別添資料―2 淀川水系の治水対策の進め方」の「5、具体の整備順序の検討」の「○河川整備基本方針方針における流下能力向上策」において「・全川において、平成19年3月までに概ね終了した堤防の安全性に関する調査結果を受けて、浸透、浸食に対する堤防補強を進める。・下流においては、洪水の流下阻害となっている橋梁の架替や河道の掘削を実施する。なお、浸透、浸食に対する堤防補強に資する堤防天端の舗装を進めるとともに、堤防裏法のブロックマット張りなど、越水に対する耐力の向上に向けて引き続き検討する。」と記しているだけです。
 ここには堤防をはじめ河川管理施設の耐震調査・耐震対策の具体的内容はまったくありません。前述の河川管理者の回答「H19年3月に河川構造物の耐震性能照査指針(案)が策定されたところであり、今後耐震点検を進めてゆきます。」のとおり平成19年3月までの堤防安全調査には耐震調査は入っていません。
 とすれば、耐震調査ぬきの堤防補強、つまり耐震対策ぬきの堤防補強が行われるということになります。
 河川管理者はいつ堤防など河川管理施設の耐震調査を行うのか具体的計画を明らかにすべきです。またいつどのような耐震対策を行うのか具体的計画を明らかにすべきです。

回答

河川構造物の耐震性能照査指針(案)が平成19年3月に新たに制定されました。本指針は、従来の耐震設計で考慮されていた設計震度に相当するレベル1の地震動に加え、レベル2地震動に対する河川構造物の耐震性能の照査について規定したものです。
※レベル1:河川構造物の供用期間中に発生する確率が高い地震動であり、震度法による従来の耐震設計で考慮されていた地震動です。
 レベル2:対象地点において現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動です。

照査の考え方は、地震により堤防に変形・沈下等が生じた場合に、河川の平常時の流水がその堤防を乗り越えて浸水被害が発生する可能性のある箇所について対策を講じることとしています。宇治川の堤防については、旧基準に基づくレベル1地震動による照査の結果では特に対策を必要とする箇所はありませんでしたが、今後は新指針に基づくレベル2地震動による堤防の耐震性能について調査検討を進め、必要に応じて対策を検討することとしています。なお、宇治川の水位としては後期放流時の水位を対象として検討する予定です。